単眼カメラ距離推定技術

自動運転やADASの高度化に伴い、自動車に搭載されるセンサーの数は年々増加しています。その中でも車両とその周囲の距離を正確に把握することは、安全性確保の観点から極めて重要な要素です。従来、距離推定にはLiDARやステレオカメラが用いられてきましたが、これらは高コストであり、中価格帯以下の車種への搭載は困難でした。また、設置スペースの制約や車両設計の自由度を損なう要因にもなっています。
こうした課題を解決するため、モルフォはRGBカメラ単体で動作するソフトウェアによる距離推定技術を開発しました。車両設計の柔軟性とコストパフォーマンスを両立しながら、安全機能の強化を実現します。
『Morpho Distance Scanner™』は、RGBカメラで撮影された1枚の画像から、対象物までの距離を推定するソフトウェアです。追加のハードウェアを必要とせず、既存の車載カメラをそのまま活用することが可能です。
ADAS(先進運転支援システム)および自動運転領域において、LiDARやステレオカメラ、ソナー、ミリ波レーダーに代わる新たな距離推定ソリューションとして、車載カメラシステムの低価格化・高機能化に貢献します。
すでに自動車に搭載されているカメラを活用できるため、ハードウェアの追加なしで高度な距離推定機能を導入することができます。ADAS機能の強化を図るOEMやTier1サプライヤーにとって、実装しやすく即戦力となるソリューションです。
また、本技術はスマートフォンやロボティクス分野など、車載以外にも応用できる高い拡張性を備えています。
近距離(1-4m)と中長距離(5-30m)、それぞれの距離に対応するデータセットを用いて評価を行いました。以下のグラフは、カメラ撮像面と対象との距離について、真値に対する距離推定の相対誤差の平均値を示しています。
たとえば、対象までの距離が10mの場合、高精度モデルでは距離推定の相対誤差は3.8%で、これは平均して38cmほどのズレが生じることを意味します。中長距離全体(5-30m)では、相対誤差の平均は5.5%です。
今後は、データセットの強化やモデルのチューニングを進め、より多様な状況でも安定して高い精度を維持できることを目指します。

上段左:元動画
下段:距離推定結果(対象までの距離をヒートマップで表示)
上段右:鳥瞰図(ピクセルごとの推定距離から作成した15m x 20mの鳥瞰図。鳥瞰図が崩れていないことは、距離推定の精度が高いことを示しています。青色部分は元動画に映っていない部分。)